「グラミンフォンという奇跡」
2009.02.17 Tuesday 23:23
バングラデシュの貧しい農村に電話を届けるという使命の下,数々の困難と幸運の果てに携帯電話オペレータとなったグラミンフォン.グラミン銀行の貸し付けにより携帯電話を手に入れたテレフォンレディが村の公衆電話屋として電話サービスを提供する.
「グラミンフォンという奇跡」の前半ではバングラデシュ出身のイクバル・カディーアがいかにしてグラミンフォンを作ったかが書かれている.そして後半はアフリカなど貧困国での携帯電話事情やカディーアが取り組もうとしているエネルギー事業についても触れられている.
「グラミンフォンという奇跡」の前半ではバングラデシュ出身のイクバル・カディーアがいかにしてグラミンフォンを作ったかが書かれている.そして後半はアフリカなど貧困国での携帯電話事情やカディーアが取り組もうとしているエネルギー事業についても触れられている.
まず,自分がこの本を読んで初めて知ったこと.
1. グラミンフォンは携帯電話会社じゃなくてオペレータだった.
グラミン銀行のことは以前から知っていて,携帯電話を同様の仕組みに用いているグラミンフォンについても多少は耳にしたことがあった.ただ,自分はこれまでグラミンフォンを電話販売会社だと思っていた.
インフラにアクセスできない農村に電話を引くという想いからお金を集め,光ファイバーを借り,アンテナを設置し,国営電話会社と相互接続しといったことを行ってサービスを開始した上で,先に述べた「テレフォンレディ」を広めて人々にコミュニケーション手段を与えたところがすごい.
2. 携帯電話を金融の道具として使っている
日本でもiモード普及によってモバイルバンキングが一般的になったが,発展途上国ではむしろ携帯電話の方が銀行ATMよりも身近・便利で,決済手段でもあるという点に驚いた.しかもその手段はGSMのShort message serviceである.
金融サービスというとモバイルSuicaとか高度な技術で作られていると思いがちであるが,実はSMSでも決済ビジネスを組み立てられるというのはこれまた新しい知見である.
3. バングラデシュは実は言われているほど貧しくない
よく一日1ドル以下で暮らしている層が地球上には大勢いるという話が聞かれるが,自分で農業をやったり家畜を飼ったりして十分な食料が得られるのであれば現金収入が少なくても食生活は豊かになる.
また,国内総生産は低くても実は中東などの海外に出稼ぎに出た家族からの送金が結構あるために,見かけよりも所得が高い人がいる.その上,購買力に対して通貨が低く評価されているため,購買力平価では4~5倍となる.
例えば,一日1ドルというのが一人あたりで5人家族が平均とすれば5ドル.でも購買力平価では25ドルくらいで,かつ食事は自給できるとしたら,それなりに生活できそうじゃない?
今まだ読みかけの「アフリカに緑の革命を!」で扱っているエチオピアではそもそもの自然条件が悪いために,農業生産性を上げるための活動が行われている.それと比べると,土地が肥沃で植物が育つ環境はそれだけで恵まれていると思う.(イスラエルに行ったとき本当にそう思った.)
それに,彼らは一次産業に従事していると言うことは作物を恒常的に販売する必要があるので一人一人がビジネスに関わっていると言っても良い.なんか毎日会社に行って黙々として仕事をこなしている人よりも,こういう国の人の方がビジネス感覚に優れていたりして.
グラミンフォンが始めた付加サービスとして出てきた「売ります・買います」掲示板サービスがある.これが好評なのは,バングラデシュの人が電話を使う主な目的として農産物を販売するときの価格調査などビジネス情報の収集に使われていることと関係があると思う.そもそも農業主体ということは何かを売って生活していたことがあるのではないか.例としては車の売買が挙げられたが,自分たちが作る作物を販売するためにも使うことで中間マージンを減らして利益を上乗せできているのかもしれない.
詳しい本の内容については,各所で色々書かれているのでそちらを参照のこと.
1. グラミンフォンは携帯電話会社じゃなくてオペレータだった.
グラミン銀行のことは以前から知っていて,携帯電話を同様の仕組みに用いているグラミンフォンについても多少は耳にしたことがあった.ただ,自分はこれまでグラミンフォンを電話販売会社だと思っていた.
インフラにアクセスできない農村に電話を引くという想いからお金を集め,光ファイバーを借り,アンテナを設置し,国営電話会社と相互接続しといったことを行ってサービスを開始した上で,先に述べた「テレフォンレディ」を広めて人々にコミュニケーション手段を与えたところがすごい.
2. 携帯電話を金融の道具として使っている
日本でもiモード普及によってモバイルバンキングが一般的になったが,発展途上国ではむしろ携帯電話の方が銀行ATMよりも身近・便利で,決済手段でもあるという点に驚いた.しかもその手段はGSMのShort message serviceである.
金融サービスというとモバイルSuicaとか高度な技術で作られていると思いがちであるが,実はSMSでも決済ビジネスを組み立てられるというのはこれまた新しい知見である.
3. バングラデシュは実は言われているほど貧しくない
よく一日1ドル以下で暮らしている層が地球上には大勢いるという話が聞かれるが,自分で農業をやったり家畜を飼ったりして十分な食料が得られるのであれば現金収入が少なくても食生活は豊かになる.
また,国内総生産は低くても実は中東などの海外に出稼ぎに出た家族からの送金が結構あるために,見かけよりも所得が高い人がいる.その上,購買力に対して通貨が低く評価されているため,購買力平価では4~5倍となる.
例えば,一日1ドルというのが一人あたりで5人家族が平均とすれば5ドル.でも購買力平価では25ドルくらいで,かつ食事は自給できるとしたら,それなりに生活できそうじゃない?
今まだ読みかけの「アフリカに緑の革命を!」で扱っているエチオピアではそもそもの自然条件が悪いために,農業生産性を上げるための活動が行われている.それと比べると,土地が肥沃で植物が育つ環境はそれだけで恵まれていると思う.(イスラエルに行ったとき本当にそう思った.)
それに,彼らは一次産業に従事していると言うことは作物を恒常的に販売する必要があるので一人一人がビジネスに関わっていると言っても良い.なんか毎日会社に行って黙々として仕事をこなしている人よりも,こういう国の人の方がビジネス感覚に優れていたりして.
グラミンフォンが始めた付加サービスとして出てきた「売ります・買います」掲示板サービスがある.これが好評なのは,バングラデシュの人が電話を使う主な目的として農産物を販売するときの価格調査などビジネス情報の収集に使われていることと関係があると思う.そもそも農業主体ということは何かを売って生活していたことがあるのではないか.例としては車の売買が挙げられたが,自分たちが作る作物を販売するためにも使うことで中間マージンを減らして利益を上乗せできているのかもしれない.
詳しい本の内容については,各所で色々書かれているのでそちらを参照のこと.
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