「断絶の時代」その4
2009.03.20 Friday 22:12
第I部 起業家の時代
知識の動向の分析
ビジョンの先行
先進国の生きる道
第II部 グローバル化の時代
2章 深刻化する途上国問題
閉ざされた発展への道
間違った理論
第III部 多元化の時代
組織の役割
第IV部 知識の時代
知識経済の特質
技能は無くならない
自負と現実の葛藤
労働寿命の延長
学校教育の延長
教育爆発の結果
知識労働者の動機付け
習慣性と飽き
3 必然の教育革命
知識の裏付けを持つ技能
学ぶことと教えること
今日,自前の発電機を持つ工場がないように,20年後には自前の大型コンピュータを持つ会社はなくなる.
情報技術はコンピュータなしでも成立する
情報は頭の仕事に必要なエネルギーである.
知識の動向の分析
知識の技術への転換に要する時間は長くなっている.
短くなったものは,製品や生産プロセスの導入から普及までの時間だけである.
技術のダイナミクスを理解するには,むしろ専門外の分野からスタートすることが必要である.
ビジョンの先行
(技術の変化を知るための)第3の方法は,思想や言葉の変化を知ることである.(中略)ビジョンは行動に先行する.ただし,理解が得られるのは行動の後である.
先進国の生きる道
途上国は,先進国においてこれまでの半世紀間近代産業と呼ばれてきた産業,すなわち近代農業,自動車工業,化学工業,鉄鋼業,機械工業によって経済発展を図ることができる.
しかし,すでに1930年代において欧米先進国は繊維,履き物,おもちゃ,ミシンなどの労働集約的産業では,日本に太刀打ちできなくなっていた.
最も生産性の高い資源のコストが,一国の生産コストを規定する.そのような資源を生産性の低い分野に投ずることは資源の無駄遣いである.先進国は,既に知識にコストを掛けてしまっている.したがって,競争力を維持するには知識の生産性を向上させなければならない.
第II部 グローバル化の時代
2章 深刻化する途上国問題
第一次大戦から今日まで,先進国入りした国が一つもないという事実こそ,グローバル経済における最大の社会的,政治的問題である.
閉ざされた発展への道
19世紀の人口爆発は,経済にとっては脅威ではなく機会となった.(中略)この人口増加が,新たな国葬にとっての市場を意味した.
こうして新興国は新開地における農産物の輸出によって,経済発展のための資金を手にした.
19世紀の先進国は食料の輸入を必要としていた.(中略)しかるに,今日の先進国のほとんどは,食料の過剰生産国である.(中略)農業も,今日では経済発展をもたらし得ない.
19世紀には,経済が発展することがごく当たり前のこととされていた.しかし,日本ではそうではなかった.
岩崎(岩崎弥太郎: 三菱を作った)は資金を説いた.渋沢(渋沢栄一)は人材を説いた.
(中略)
岩崎と渋沢は単なる豊かな日本ではなく,想像力のある強い日本を作ろうとした.いずれも経済発展の本質は貧しい人を豊かにすることではなく,貧しい人の生産性を高めることであることを知っていた.そのためには生産要素の生産性を高めなければならなかった.
間違った理論
今日経済学は,データとコンピュータを手にしたおかげで,経済工学とでも言うべき物に変わりつつある.
最初の近代天文学者は(中略)16世紀のティコ・ブラーエである.(中略)だが彼は膨大な事実を集めたが,解釈を誤った.
(中略)
間違った理解に基づく正確性ほどもっともらしく,そのくせ危険な物はない.
今日の経済学は無効となった物を前提としている.しかも問題の深刻さは,過去2世紀間に経済学の父たちが意識して前提としていたことを,今日の経済学は意識することなく前提としているところにある.
第III部 多元化の時代
組織の役割
自らの事業は何かというと胃に対する答えほど,難しく,議論の分かれる物はない.(中略)目的は,(中略)目指すべき経済的満足や貢献によって定めなければならない.
第IV部 知識の時代
知識経済の特質
知識経済化が労働の消滅をもたらすことはない.(中略)知識労働者は,ますますその重要性を増し,ますます長時間働く.
知識労働は,生産的な労働の常として,自らに対する需要を自ら生み出す.
技能は無くならない
知識が技能の基礎となる.(中略)知識は技能の基盤として使うとき,初めて生産的となる.
知識は体系的な学習を経験に取って代わらせる.
自負と現実の葛藤
自らを独立した専門職とする自負と,所得は遙かに上回る物のある意味では昨日の熟練労働者の後継に過ぎないという現実の間に葛藤が生じている.(中略)知識労働者を以下にマネジメントするかが最大の問題となる.知識労働者に生産性を上げさせるとともに,仕事の満足感を与え,かつ,成果を上げさせると共に位置づけを与えるべくマネジメントしなければならない.
労働寿命の延長
労働寿命の延長は,農業人口の急激な減少が原因の1つだった.
学校教育の延長
教育爆発の結果
学校教育の延長が,仕事に知識を適用することを必然とした.
労働力が変化した結果,今日では仕事にとって必要かどうかに関わりなく,我々は知識労働の仕事を作り出さなければならなくなった.なぜならば,高度の教育を受けた者を生産的な存在にすることのできる唯一の方法が知識労働だからである.
知識労働者の動機付け
知識労働者の動機付けに必要な者は成果である.
知識労働者は自らがなすべきことは上司ではなく知識によって,人手はなく目的によって規定されるべきことを要求する.権限ではなく成果が中心となる組織を必要とする.
習慣性と飽き
多くの知識労働者は,たとえ仕事に満足していても中年のはじめには飽きてくる.
3 必然の教育革命
教育が,経済的には何の役にも立たない贅沢と見なされていたことは,一般校棟教育のルーツを見れば分かる.
今日の一般高等教育が文法に重きを置いているのは,単にそれらの高等教育機関が文法の能力を必須とする職業のための専門学校としてスタートしたからに過ぎない.(中略)しかるに今日では,学校はあらゆる者にとって成長の場とされるに至った.だが,もしそうであるならば,文法の教育は,生産できてないことはもちろん,適切でもない.
成長の過程では,成果を上げることに伴う達成感を経験することほど重要なことはない.
知識の裏付けを持つ技能
今日求められているものは,知識の裏付けのもとに技能を習得し続ける者である.純粋に理論的な者は少数でよい.しかし,技能の基盤として理論を使える者は無数に必要とされる.
学ぶことと教えること
人間とは,行動する存在であると共に認識する存在である.習慣的な存在であると共に内省的な存在である.この両者が合わさった者が知識である.言い換えるならば,学べることは教えられず,教えられることは学べない.しかも,教えられて初めて学ぶことができるようになる.逆に,学ばなければ教えられるようにはならない.
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